池波さんは新築住宅で書き上げた作品を設計者である辰野清隆建築事務所へその都度サイン入りで送り届けてくださいました。
昭和44年に完成した建物は一階が応接間で自慢のコケシが飾られています。応接間は出版関係者が原稿関係で多く利用されたようですが、司馬遼太郎さんも一度、完成後の新築住宅を訪問されたとのこと。
キッチンに二人用の小上がりがありますが食事は応接間を利用されていたようです。池波邸へ住宅完成確認にお邪魔した時、私は小上がりで奥さんに設計担当の清水君とお茶を御馳走になりました。キッチンの奥はお母さんの部屋で繋がっています。キッチンを出ると直ぐに唯一ドアのトイレがあります。それ以外の全ての部屋の戸は池波さんの注文通りの引戸です。当時は洋風建築が主流の時代で和風建物以外はドアが好まれていました。